デニムやスニーカーやチェックシャツ、カジュアルな着こなしが人気のFACTOTUM/ファクトタム。2015春夏コレクションは成功か?失敗か?
FACTOTUM/ファクトタムというブランド
近年どうも精彩を欠いているようにしか見えないFACTOTUM/ファクトタム。
そんなファクトタム、2015春夏はどうやらコレクションブランドらしさを取り戻した様にも思えた。
2004年、鳴り物入りでデビューしたファクトタム。
それもそのはずデザイナーの有働幸司氏は国内メンズブランドの老舗、
あのLoungeLizard/ラウンジリザード創業者の一人。(3人のうちの一人)
こりゃ凄いブランドが出来上がるぞ!と業界全体が期待した2004年。
期待に応えるようにデニムを中心とした肩肘張らないカジュアルブランドが誕生した。
他を引き寄せない上級者向けのコレクションブランドではなく、
誰もが気軽に手を出せるカジュアルブランドだ。
若者は皆、ファクトタムのデニムを穿き、細身のチェックシャツに身を固めた。
コレクションとリアルクローズの狭間で生きる
しかし徐々に方向性はぶれていった様に思う。
ファクトタムは東京コレクション出展後、徐々に「コレクションブランド」として"癖のあるもの作り"に走って行ってしまった。
ラウンジリザードなどは10年以上メンズファッションの老舗として運営しているが、
一度もコレクションに手をかけたことはない。
「リアルクローズブランドとして、誰もが手を出せるように」という思いがあるからだ。
コレクションに出展し、自分の個性を全面に打ち出すような真似はしない。
あくまでも「ブランドの役割」を認識し、それ以上のことはしなかった。
しかしファクトタムは違った。
デニム、チェックシャツ、テーラードジャケットといった「リアルクローズ」を地で行くラインナップながら、コレクションに手を染めてしまった。
結果「チグハグ」なものができた。
コレクションブランドとしても半端な出来で、
リアルクローズブランドとしてはクセがある物作りになってしまった。
私は「覚悟がないな」と思った。
コレクションブランドとしてやるのならば、市場の限られた層を狙うか、
もしくは海外への進出も含めて真剣にやるべきだった。
リアルクローズを追求するならば、誰もが着れるカジュアルに徹するべきだった。
どちらも狙ってしまったがゆえに、「半端」な存在になってしまった。
ファクトタムは年を追うごとに精彩を欠き、
情報によると売上状況も減少していっているらしい。
2015年再び輝きを取り戻したファクトタム
そんな中、2015SSは成功ではないか、と私は思う。
「自分らしさの追求」をテーマに掲げた今シーズン。
トレンドもあまり気にせず、自由に、のびのびと物作りをしているのではないかと
想像できる「コレクションブランド」らしいコレクションだった。
クセのある柄使いや、ジョッパーズデニムなど
あまりリアルクローズを意識してないように見える。
柄はスウェーデン軍のカモフラージュをファクトタムなりにアレンジしたもの。
ミリタリーともサイケデリックとも表現できるような独創的な世界はとても新鮮でかっこよく見えた。
ファクトタムは一皮むけたように思う。
好きなように服を作り、好きなように打ち出して、
それでダメならいいじゃないか。
それがコレクションなのだから。
売上を追求した「自分らしさ」がどこにある。
リアルクローズではなくコレクションにシフトしたファクトタムは今までとは全く違う輝きを放って見えた。
ショーのフィナーレはモデル自身がそれぞれ選んだTシャツを着たもの。
自分らしさの象徴であると言う。
リアルクローズはラウンジリザードに任せればいい。
ファクトタムのブランドネームは「勝手に生きろ」という意味。
万人を意識したブランドではなく、勝手に生きるわがままなコレクションブランドであってほしい。
そうするだけの実力があるのだから。